ロッド・スチュワート「アンプラグド」

ライブ盤のなかでもアンプラグドは人気がある。演奏がシンプルになることで、曲のよさをじっくり堪能できるからだろう。例えるなら、とんかつを食べるときにソースではなく塩をつけて食べて、素材の味を楽しむような感じ。

正直、ロッド・スチュワートについてはよく知らない。ジェフ・ベックが好きなので、一緒にやっているものに関しては聴いてきた。このアルバムを買ったのも、⑧people get readyがあるからだった。

発売は1993年。日本盤。ロニー・ウッドがゲストで来ていることがトピックだろう。時にしっとりと歌い上げ、時にシャウトする。ボーカリストとして評価が高いのもうなずけるパフォーマンスだ。

一方で、アンプラグドじゃないパフォーマンスで聴きたくもなってくる。とんかつを塩で食べるのがアリとはいっても、あくまでソースで食べるという本筋があるのが前提だ。ソースで食べるという一番おいしい食べ方があるから、塩で食べるという行為が生きてくる。アンプラグドというスタイルも好きではあるが、それだけでは飽きてくる。オアシスがライブのとき、アコースティックコーナーを挟んでいたが、あれは結構いいアイデアかもしれない。とんかつ10切れあったら、塩は2、3切れでいいのだ。

というわけでロッド・スチュワート好きならこのアンプラグドはもちろんいい。だけど、いきなりこれを買うのはよくない。慣れてきてからでいい。

【購入データ】購入店舗=天神店。購入日=2018年5月。

 

山中さわお「ディスチャージ」

ザ・ピロウズのボーカルのソロアルバム。ソロでやっていることを知らなかった。発売は2010年。初回限定盤でステッカーやDVDが付いてきた。

基本的にはピロウズの系統だ。とはいえ、ピロウズはもっと音に厚みがあったが、ソロでは軽めになっている。軽めといってもネガティブな意味ではなく、リラックスしつつ内省的な印象。大きく違うのは歌詞が英語であること。その点についてはなぜ?と思うが、そうしたかったんだろうから、もうしようがない。

④エンジェルの素朴さが好き。⑤パープル ムーンライトでは「今夜はロックを聴かないよ」とつぶやく。このアルバムを作ったときの心境がそうだったのかもしれない。ロックバンドだからといって、普段からロックばかりを聴いているわけでもない。若いときならともかく、年を取るとクラシックでもジャズでもワールドミュージックでもなんでもいけるようになってくるものだ。良くも悪くもこだわりがなくなっちゃうというか。だから、年を取ってもなお、ロックバンドでロックをやり続けるというのはすごいことでもある。芯がある。

このアルバムも基調はロックである。しかし、きっと肩の力をここでは抜きたかったんじゃなかろうか。たまに聴きたくなる1枚になりそう。

【購入データ】購入店舗=飯倉店。購入日=2018年5月。メルカリでは450円から1300円!まで。

 

トラヴィス「オード・トゥ・ジェイ・スミス」

なんか近所の穏やかなお兄さんが急にあらぶってみせたみたいだ。トラヴィスといえば美メロでちょっと暗さのある穏やかギターロックの印象だった。ところがこの2008年発売のアルバムはちょっと違う。

ライブ感があるというか、音がゴツゴツしている。これまでは線が細かったが、そんな印象はこのアルバムにはない。きっとリアルタイムで聴いていたファンは驚いたんじゃないか。2作前のアルバム、12メモリーズまで新品を買っていた自分も今、驚いている。

改めてトラヴィスを調べてみると、思わぬ評価を受けていたみたいだ。トラヴィスやレディオヘッドがロックが内省的なものになっていくのを助長した。その反動がストロークスのようなガレージロック・リバイバルに繋がっていった…。僕の10代がまさにそのころだったけど、そんなんだったっけ?

音は骨太になったけど、内省的なところはまだ残っている。デビューから順番に聴いていくのがいい。

【購入データ】購入店舗=天神店? 購入日=2018年6月。

グレン・ミラー「GREATEST JAZZ」

グレン・ミラーという人については何も知らなかった。ビッグ・バンドを率いていたようだ。よく分からないけどおそらくこれはベスト盤なのだろう。①イン・ザ・ムードという曲は誰もが耳にしたことがあるはず。CMにテレビ番組、ゲームにも使われていたという。もともとはジョー・ガーランドという人が作曲したのだが、グレン・ミラー楽団の演奏で1939年、ヒットした。

活動期間は1920年代から40年代。44年で40歳のときに死んでしまった。アメリカのトロンボーン奏者で、スウィング・ジャズの時代を生きていた。とにかく聴いていて楽しくなってくる。

古い音源なので音質はよくないが、気になるレベルではない。それよりも気になるのは、このCDの輸入元として書いてあるエコー・インダストリー株式会社だ。ネットで検索してみると…たまに駅で売っている謎のCDみたいなものらしい。著作隣接権の保護期間が切れていているから許可なくCDとして出せるそう。ただ著作権は保護されている状態なんだとか。

海賊盤ではないけど、オフィシャルとも言いがたいものなのだろう。もちろん合法のシロモノではある。

背景はともかく音楽自体はすばらしいものだ。

【購入データ】購入店舗=天神店。購入日=2018年6月。

ストーン・ローゼズ「ザ・ベリー・ベスト・オブ・ザ・ストーン・ローゼズ」」

オリジナルアルバムは2枚しか出さなかったストーン・ローゼズのベストアルバム。2002年発売。ポストカード付き。基本的には1st期からで2ndの曲は少なめ。うまくまとまっている。

①I wanna be adoredはオリジナルアルバムと同じくイントロが長いバージョン。短いバージョンもあるけど、やっぱ長い方がいい。3曲目ten storey love song。waterfall、made of stoneときてlove spreadsがくる。曲順を決めるに当たっては2nd曲をどこに置くかで迷ったんじゃないか。キラキラしたインディーロックからハードロックになっちゃったわけだから、雰囲気がそもそも違う。デジタルリマスターされていて、特に1st期の曲は音がくっきりはっきりしている印象だ。⑧サリー・シナモンは新鮮でよかった。⑨フールズ・ゴールドは長いアレンジ。

ストーン・ローゼズを知らない人には間違いなくオススメ。ただすでにオリジナルアルバムを持っているという人にはほかのベストアルバムの方がいいかもしれない。過去のベストアルバムにはB面曲がいっぱい入っているのがあって、そのB面曲のクオリティが高いのだ。ストーン・ローゼズのアルバムは全部いいとも言える(ガレージ・フラワーというメンバー未許可のアルバムは微妙だが)。このベストのよさはリマスターされているのと、まとまっているという点かな。安心して聴ける。

そういえば再結成していたはずだがどうなったのか。新曲も買っていたんだが、結局ニューアルバムは出ず。残念だ。

【購入データ】購入店舗=天神店。購入日=2018年6月。このベストアルバムはたまに見ないでもない。メルカリでは500円が多かった。

ミューズ「ブラックホールズ & レヴァレイションズ」

これまでずっとミューズはレディオヘッドの子どもみたいなものだと思っていた。ボーカルのファルセットボイスが被って見えた。それもあってほとんど聴いてこなかったけど、280円コーナーにあったから手に取ったら当たり。①②③の冒頭3曲で心を持っていかれてしまった。

2006年発売の4枚目。日本盤で帯付き。ミューズはイギリスのバンドで、ロンドンオリンピックでは公式ソングを担当している。名実ともにイギリスの国民的バンドになっているのだ。ブレイクは3枚目のアルバムからだけど、この4枚目もいい。③スーパーマッシヴ・ブラックホールには度肝を抜かれた。よくこんな曲作ろうとおもったなあと感心もする。音もメロディーも歌詞も挑戦的。それでいて何度も聴きたくなる中毒性がある。すばらしい1曲だと思う。

ギターを重ねた轟音ロックでありながら、繊細さがある。ひねくれたメロディーのようにみえて、みんなで歌えるアンセムになっている。⑥インヴィジブルのようなバラード曲になると特にボーカルの高い声がよく似合う。

280円で買った割りには濃い1枚だった。オススメです。

【購入データ】購入店舗=天神店。購入日=2018年2月。たまに280円コーナーで見かける。メルカリで調べると300円から700円ぐらいですね。

中村一義「金字塔」

1997年発売。1stアルバムにあたる。当時、音楽雑誌のロッキンオンかスヌーザーでやたら持ち上げられていた記憶がある。その割りにはブレイクしきることがなかったけど、どうしてなんだろう。曲も声も面白くて好きなんだが。②犬と猫がシングル曲。これを聴いてう~んとなるなら、アルバム全体を聴く必要もないのだろう。

はっぴいえんどのような「日本語ロック」と呼んでもしっくり来る。独特の世界観を感じられて、誰かと似ているというのはなく、中村一義という個性を十分に見てとることができる。音楽雑誌が飛びつくのも当たり前だろう。1997年当時、高校生だった僕も今まで聴いていたものと違う種類の奇妙な音楽であることに魅力を感じていたように思う(お金がないのでCDは買っていなかったがラジオで聴いて)。

⑥魔法を信じ続けるかい?では「この歌を二十年後に聴けば、夢が解かる」と歌う。発売当時に買って聴いていれば、夢が解かったか確かめられたのに…残念である。中古で安く買えるのは便利だけど、やはり発売直後に新品で買うことのよさもある。ゲームもそうでしょう。オンライン要素があるゲームだと、数年後に中古で買ってアクセスしても、ほとんどユーザーがおらず、また、ユーザーがいても力の差が圧倒的で新入りには厳しい。いい音楽はいつ聴いてもいい音楽だが、リアルタイムで買うとより楽しめるのは間違いない。

歌詞の癖が強すぎたのがブレイクしきらなかった原因かと思うが、これから先もいいアルバムとして残っていくんじゃなかろうか。

【購入データ】購入店舗=飯倉店。購入日=2018年5月。たまに280円コーナーにある。

 

ザ・ブルートーンズ「expecting to fly」

クジャクを正面から撮ったジャケットに気合が自信が表れている。ブリットポップ旋風の真っ只中、ブラーとオアシスに続いて、さらに超えようとするわけだから、自信がないとやっていけない。

発売は1996年。メジャーデビューアルバムに当たる。①talking to clarryから若さあふれる音作り。ギターのジャ~ンって音が迷いなくすっきり響く。②bluetonicはメロディーが覚えやすいポップな曲。ぢシングルになっただけのことはある。

有象無象がいるブリットポップ勢だけど、ブルートーンズはしっかりした曲を作っている。⑤the fountainheadはブラーやオアシスの単なるフォロワーではないことを気付かせてくれる。ともにこんな繊細なギターを奏ではしないだろう。しいて似た感じのを探せばマンサンかなあ。

⑦slight returnを聴くとストーンローゼズっぽいと言われえるのも分かる。いや、ほかのバンドの名前を引っ張ってきてもしようがない。ブルートーンズのよさはイギリスのロックをしっかりと引きついでいること。キラーチューンに欠けるが1曲1曲が丁寧に作られており、安心して聴ける。流行に乗って爆発的に売れたということはなかったみたいだけど、それは飛びぬけた曲で引っ張っていくということがなかったからだろう。じっくり聴くのにふさわしいんじゃないか。

【購入データ】購入店舗=飯倉店。購入日=2018年5月。たまに280円コーナーで見かける。

AIR「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」

AIRはもともと好き。「ユージュアル・トーン・オブ・ボイス」というアルバムをよく聴いていた。

AIRには聴かせるミディアムテンポの曲とミクスチャーロックな曲とおおまかに分けるとこの2つがある。このアルバムは前者が多い。「ユージュアル~」みたくジャズっぽいというか、肩の力を抜いた曲があって聴いていて癒やされる。

AIRを全く知らない人にいきなり薦めていいかは微妙。もっとロックしている初期のアルバムの方がいいかもしれない。でもAIRにハマったらこういったミディアムテンポな曲こそ魅力だと気付くはず。

【購入データ】購入店舗=天神店。購入日=2018年3月。280円コーナーにはよくあるはず。

ジョン・フルシアンテ「シャドウズ・コライド・ウィズ・ピープル」

レッドホットチリペッパーの元ギタリストのソロ。2004年発売。かなりメロディアス。ファンク色の強かったレッチリにもメロディアスな曲が増えていたのは彼のおかげかもしれない。

素朴といってもいいくらい。暖かみがある。②omissionでそれがよく分かる。

ずいぶんまえにエグザイルからボーカルの1人が抜けてソロになった。脱退直後のソロシングルが「人間じゃろうが!」。聴いたことはないが、エグザイルとは違って人間味のある曲なんだろうと予想できる。そうじゃなかったらウソだ。

ジョン・フルシアンテのソロ作品もレッチリに対比してみると、とにかく素朴で人間的。プロテインのにおいがするマッチョなレッチリに対して、人間じゃろうが!とむき出しの野性を武器にしているかのようだ。レッチリファンが流れでこのアルバムを聴いてもう~んと首を傾げてしまうだろう。メロディーはレッチリ的ではあるんだけど、肝心要のファンク色はない。男臭さがない。色気はあるように感じるが、種類が違う。レッチリはセックスアピール満載だが、このアルバムは哀愁という色気だ。

⑨ディスコールドからの流れが好き。これは疾走感がある。⑩はインストで不気味。⑪は優しさがある。⑫には懐かしさが。⑬以降もいい。しっとり聴きたいときにはいいアルバムだ。

【購入データ】購入店舗=六本松店。購入日=2018年6月。